不動産には、所有権だけではなく、他に抵当権・買戻し特約・仮登記等をはじめ様々な権利が付随し、登記簿謄本にその旨の記載があります。
不動産の相続や売却の準備のため、いざ登記簿謄本をとってみると、前述の消し忘れの権利が残っていることがよくあります。このような登記上の権利は、役所や銀行が自動的に消してくれるものではありません。
不動産を売却する際、登記簿が実態に添い変更されていない場合、支障となることが少なくありません。
そこで、今回は、担保権の中でも代表的な「抵当権」の抹消手続きについて、考えてみたいと思います。
Ⅰ 「住宅ローン等の金融機関」からの借入金を完済している場合
あるときは、そのまま使用することが原則可能です。
但し、交付時期が平成17年以前のものや、抵当権者が合併等により解散して現存して
いない場合は、追加書類の交付が必要となることがあります。
(2) 抵当権抹消書類が手元にない場合は、抵当権者に対して再交付を依頼します。
再交付される抵当権抹消書類については、抵当権者の代表者印の捺印および印鑑証明
書が必要となるため、交付までに数週間かかることがあります。
その後の抵当権抹消登記についても、登記済証(登記識別情報)紛失による事前通知
制度という方法(抵当権者と法務局間での郵送による確認作業)で手続きを行うことが多く
登記完了までの期間が、通常より数日~1週間ほど増えることになります。
なお、不動産売買による所有権移転登記の際には、取引の安全上、上記事前通知制度
による抵当権抹消登記は事前に完了させることが必要であり、売買代金の決済日前に
完了させるには、余裕をもって抵当権抹消登記に取りかからなければなりません。
Ⅱ 「個人」からの借入金を完済している場合
原則可能です。但し、抵当権者が死亡している場合や住所変更をしている場合には、
追加書類が必要となることがあります。
(2) 抵当権抹消書類が手元にない場合は、抵当権者に対して再交付を依頼します。
再交付される抵当権抹消書類については、抵当権者の実印の捺印および印鑑証明書が
必要となり、その後の抵当権抹消登記については、前述の事前通知制度という方法、
または司法書士が抵当権者と面談し、本人確認情報を作成する方法で行います。
本人確認情報による抵当権抹消登記は、事前通知のような郵送でのやり取りはありません
ので、売買による所有権移転登記と同時に申請することも可能です。
なお、金融機関等とは違い、個人の抵当権者については、本人またはその相続人の
連絡先がわかないケースや、再交付に協力してもらえないケースもあります。 特に、
抵当権者が死亡している場合には、その相続人全員の協力が必要であり、もし、協力が
得られない場合は、抹消登記を求める裁判により解決することになります。
上記のように、完済した債務に関する抵当権でも、消し忘れていると面倒なことになる可能性があります。 「住宅ローンは完済したから銀行が消してくれている」と思い込んでいるケースも少なくありません。
先延ばしにすると、複雑な手続きや過分の費用がかかることもありますので、これを機に一度ご自宅や実家の登記簿を確認してみてはいかがでしょうか。