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大ちゃん先生コラム

2025.02.07

「遺言を作っておくべきか」「死亡保険に入っておくべきか」。多大な手間と費用をかけた対策が本当に役に立つかどうかは、何かが起こるまではわからないことです。すべては誰のためなのでしょうか。今回は「相続対策をするということ」についてお話しします。

「この人は、本当にやさしい人だなあ…」
相続の相談を受けていて、私がよく思うことです。相続対策は、その人に直接的な利益をもたらすものではありません。死亡保険などが最たる例です。そのお金があれば、どれだけ楽しいことができるでしょうか。その人が好きなだけ散財して、思いっきり贅沢をすれば良い。そうすれば、財産はなくなり、分割の悩みも税金の心配もなくなります。あなたが築き上げたお金、あなたが守ってきた財産、どうしてそれではいけないのだろうかとさえ思います。
また、すべての手続きが終わった後、相続人から「ありがとうございます」とお礼を言われることがあります。
「あなたに出会えたから、父は遺言を書いてくれました。おかげさまで、手続きも滞りなく、家族の間で嫌な思いすることもありませんでした」

ありがたい言葉です。しかし、私たち相続支援コンサルタントは、対策をした人から指名を受けた「仕事人」。もし声をかけるとしても「ご苦労さまでした」くらいで十分です。相続人が本当にお礼を言うべきは「相続対策をしてくれた人」に対してでしょう。
その人が愛情にあふれていなければ、断固たる意思を持っていなければ、相続支援コンサルタントがいくら諭したところで対策はできていません。
優しくない人は相続セミナーを受講しに来ません。家族のことを大切に思っていない人は、相続相談に足を運んだりしません。すべてはその人の「愛情」や「想い」です。しかし、家族がそれに気づいて涙を流す時には、その人はこの世にいません。もしくは、この世にいたとしても、すでに家族の顔すらわからない状態になっていたりします。
いつそうなるかもわかりません。夫婦、親子、兄弟。いつ、だれが、どの順番で。すべては神のみぞ知る。まったく予想もしていなかった順番になったり、そうはならないだろうと思っていたことが起きたりします。
私たち相続支援コンサルタントができることは、その人の想いに寄り添い、できるかぎり「落とし穴」をふさぐことだけです。危険な穴は無数にあり、大きさも深さもいろいろ。すべてを完璧にふさぐことは難しい。しかし、大きな穴のいくつかにフタがしてあるだけでも、後を通る家族がどれだけ楽をすることか。
毎日かかってくる相談の電話は、落とし穴にはまって全身泥だらけになった人たちの悲鳴ばかりです。あなたが靴を汚さず、先人の思いを引き継いでまっすぐ歩くことができたのなら、次はあなたの後ろに続く人のことも考えてみるべきでしょう。
脳は老化します。その思いも、年を取るといつか記憶から消えていきます。自分の足で、道に迷わずに相談に来られるうちに、その悩みを相談しておきませんか。新しい年、ぜひ、一念発起してみてください。