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◎相談事例◎ 生前の預金の引き出しについて

2023.11.15

【内容】

相続をどうしたらいいかアドバイスをください。

義母が亡くなり、相続が発生しました。

義母の預金を義弟が管理していました。

義母を義弟が施設に入所させたのですが、

居住する市に施設はたくさんあるのに、

遠隔地の市の施設を選びそしてその施設は

義弟の友人の病院です。義母は施設に入る前から

認知症を発症していました。

義母が亡くなり、相続をする際、預金移動照会した

ところ、市の直前後に3,000万円が500万円になっていました。

死の直前、義弟の子の結婚祝金に300万円×2、婚約祝金に300万円

もらった。

また、家のリフォームに使った。居住してない家を何度もリフォームした

ようです。

残金500万円もリフォームに使うかもしれないと言って引き出して義弟の

口座に入金していると言っています。

結婚祝金に300万円、婚約祝金に300万円は常識的に妥当でしょうか。

子の夫に結婚祝いは1円もくれなかった倹約家の義父母です。

対抗し勝てるのでしょうか。実は、義母が亡くなった後、子である夫が亡くなり、

義弟が好き勝手に相続を進めています。

 

【回答】

被相続人名義の預貯金口座から生前に預金が引き出されていたケースでは、

通常、次のような事情が考えられます。

①被相続人から預金の引き出しを頼まれていた

➁被相続人から贈与された

➂被相続人の財産を横領していた

これらのケースごとに、一般的な対処方法をみてみます。

 

①被相続人から預金の引き出しを頼まれていた

被相続人から依頼されて、療養看護などのために必要なお金を

引き出していたことも当然考えられます。

両社の間で委任状や委任契約があったかどうかを確認してみましょう。

ただ、親族間では口頭での委任で済ませているケースも多いため、

本当に被相続人からの依頼であったとしても委任状等があるとは

限りません。

そこで、あわせて引き出したお金の使い道も確認する必要があるでしょう。

請求書・領収書の金額と引き出した金額が大きく乖離していたり、被相続人の

生活費や療養費に比べて引き出した金額が多過ぎると、横領が疑われます。

 

➁被相続人から贈与された

被相続人から贈与されたということであれば、贈与契約書の有無を確認します。

生前に贈与されたことが確認できれば、贈与された預金は受贈者の財産ですから

何も問題はありません。

受贈者が法定相続人であれば、特別受益として相続財産に加えた上で遺産分割協議を

行うことができます。

受贈者が法定相続人以外の場合は、その贈与により遺留分を侵害されたということに

なれば、遺留分侵害額請求が可能です。

ただし、贈与契約は口約束でも法的に成立しますので、契約書を作っていなかっただけだと

言われると贈与の事実を確認するのは現実的に困難になります。

なお、贈与は契約の一種ですから、例えば贈与者が認知症等で判断能力に問題が生じていた

場合は、そもそも贈与は成立しないと考えられます。

 

➂被相続人の財産を横領していた

事実確認を確認して、預金を引き出した理由に正当性がなかった場合や、預金を引き出した人が

横領を認めた場合は、お近くの弁護士に相談しましょう。

具体的にどのような手続きをとるかは弁護士との話し合い次第ですが、相続財産の横領で刑事責任を

問うことは難しいケースが大半で、民事訴訟を起こすことが一般的です。

訴訟は「不当利益返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」として提起します。

ただし、民事訴訟を起こしても多くの場合は和解による解決が図られます。

訴訟を起こすには、預金が横領されていることを示す証拠が当然ながら必要です。

例えば、次のようなものです。

・通帳や預金の取引履歴など横領の事実がわかるもの

・預金を引き出した人が被相続人以外であることを証明するもの

被相続人が預金を引き出すことができない状態にあることを証明して、被相続人以外の人が

預金を引き出したことを立証する方法もあります。

被相続人が認知症であったり寝たきりであったりした場合は、医師の診断書やカルテなどが

証拠になります。

 

また、死亡後に預金をおろした場合も当然問題になります。

口座名義人が死亡してしまった場合、その預金は相続財産です。

そして、法定相続人が死亡してしまった場合、その預金は相続財産です。

なお、被相続人の死亡後に相続人の一人である子が死亡した場合、子が持っていた相続権は

子の法定相続人が承継します。

被相続人の未払債務の弁済や葬儀費用に充てるために下したことが立証されれば別ですが、

勝手に下して私的に使えば不法行為となります。

不当利益返還請求や、場合によっては損害賠償請求の対象となる可能性もあります。

ただし、死亡後に勝手に預金を下した場合も、窃盗罪や横領罪で刑罰を課すのは難しいケースが

大半です。

「法は家庭に入らず」という考え方から、家族の間での窃盗や横領は罪に問わないことになっている

からです。

 

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