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コラム「二つのカンジョウ」「心の感情」「お金の勘定」
2023.03.06
不動産オーナーにとって、自分で建てた建物はまさに「愛する子ども」。お世話するのが
楽しくて仕方がありません。
そんな「手のかかる子ども」であるがゆえに、まったく他人の意見が耳に入らなくなって
しまう方がいます。今回は人間には必ずある「二つのカンジョウ」、「心の感情」と
「お金の勘定」についてお話しします。
「うちのマンションは築30年ですが新築同様です。あと50年は余裕でもちます。
満室で年間1000万円も儲けが出ています。売るなんてとんでもない。娘にも
絶対売ってはダメよと言い聞かせています」
私のところに相談に来られた60代後半の奥様は、自信満々にそうおっしゃられました。
「ねえあなた、あなたもそう思うでしょう?」と隣の旦那様にも同意を求めます。しかし、
旦那様は微笑を浮かべ、あいまいな表情のまま。
実は、相続相談を申し込まれたのは、旦那様のほうなのです。私は途中まで、旦那様の
反応がなぜ薄いのかが、いまいちよくわかりませんでした。しかし、面談も終わりに
差し掛かった頃、ようやく合点がいきました。あれが、40年以上連れ添ってきた夫婦の距離感、
奥様の性格をよくわかっての最善の挙動だったのです。
「残念ですが、試算の結果、この状態では相続税が払えません。概算の相続税は4000万円で、
流動性資産をすべて合わせても800万円前後です。しかも、お子様が二人おられるので、
息子様が娘様に遺留分侵害額の請求をする可能性があります。対応策としては、娘様は
マンションを売るしかないと思われます」
面談の冒頭、私は分析の結果を説明しました。いわゆる「お金の勘定」の話しです。私は
コンサルタントですので、まずは分析をします。そして、今まで経験した事例に比べて、
状態が良いのかどうかをお答えします。今回のケースに関しては、完全に「手詰まり」と
いう状態でした。
しかし、「マンションを売る」という言葉が出たとたん、奥様の「心の感情」が堰を
切ったようにあふれ出しました。
「うちのマンションは駅からたった徒歩10分。いつも私が掃除しているから、外回りも
共用部もピッカピカ。平成元年に建てる時から私が関わって、他にはないアピールポイントが
たくさんあります。斬新な色も間取りも、当時は建設会社も不動産会社も反対しましたよ。
でも、今ではそれが良いって入居者さんも言ってくれて」
隣で旦那様が、チラチラと奥様に目配せされます。しかし、奥様の「うちのマンションは
すごいのよ」という話しは止まりません。
「相続税や代償金が5000万円かかる? それくらい1年に1000万円も儲かっているの
だから、たった5年で払えるでしょう。売るなんてとんでもない」
ここまでくると、残念ながら処置不能です。奥様のトークを微笑で受け流しながら、面談を
手早くまとめます。
あとは、ご本人の「感情」が落ち着いた後で、もう一度、「勘定」に目を向けてくれることを
祈るのみです。
コメント
建物はどんどん古くなっていきます。そして、日本の人口はどんどん減っていきます。
駅から10分も歩いてもらえない時代がすぐにやってきます。1000万円の儲けが、
果たしていつまで続くのか。そもそも儲けるはずの物件なのに、キャッシュが貯まって
いないのが、賃貸経営のまずさを物語っているのですが、奥様の目にはその現実が
映りません。
旦那様は、不安があったからこそ、奥様に現実をわかってほしくて相談に来られたのでしょう。
しかし私は、期待に応えることができませんでした。
私もまだまだ修行が足りません。相続コンサルタントとしては、直球ばかりでは勝負できない
場合もあります。もっともっと腕を磨いて行けたらと思う毎日です。
「Love is Blind」。人間の「感情」は、とても「厄介」です。
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