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賢い生前贈与のススメ④

2022.04.15

前回は暦年贈与で押さえておくべきポイントと、その注意点について解説しました。今回は相続税申告時に重要な、税務署が注視する点はどこかについてお伝えします。

 

税務調査の現状

平成27年に、相続税の基礎控除が減額されたこと等で、相続税の申告が必要になる人の数が増えています。平成26年度には約5万6000人でしたが、平成27年度には10万人を超え、平成29年度には約11万人の方が相続税を納めています。

では、相続税を納めた方のなかで税務調査が行われた件数は一体どれくらいあるのでしょうか。答えは約1万2000件。割合でいうと約11%です。つまり、納税者のうち10人に1人が税務調査を受けているという計算になります。

また、税務調査を受けた方の中で、相続税の追徴(追加で相続税を支払うこと)を受けた件数は、約1万件あります。実に83%の方が追徴されているという現状があります。

税務調査は、税務署が調査対象者を無作為に選んでいるのではなく、ある一定の狙いをつけて行っています。そのため税務署は、過去に相続を受けた方の財産や確定申告の内容、法人税の申告内容など、ありとあらゆる情報を収集していると言われています。

余談ですが、「〝ぜいむしょ〟を漢字で書いてください」という問題を出すと、「税務所」と書かれる方がいます。「税務〝署〟」が正しい漢字ですが、この「署」という文字に、見覚えはありませんでしょうか。そう、警察署や消防署で使われる「署」なのです。

「署」の漢字が付く役所は、特定の任務を持ち、権限を行使できる場所という意味があります。そのため、税務署長は自ら処罰を下すことができ、それに従わない違反者は逮捕されることもあります。「署」は、より強権的で取り締まりの要素が多い機関に用いるのですね。

 

主な調査ポイン

①税務署は事前調査をして出向きます

皆さまが提出した死亡届の情報は、市区町村から所轄の税務署へ届けられます。その情報を受けて、税務署は相続税を支払う必要があるだろう方に対し申告案内を発送します。申告案内は、個人の確定申告情報や不動産の固定資産の情報をもとに作成され、相続人に申告を促すために送付しています。

税務署は相続税の申告書を受理すると、その内容を確認(審理)します。結果、税務署から調査対象に選ばれた相続人には、次のような「準備調査」が行われます。

●故人が所有していた不動産の情報収集

●銀行や証券会社、保険会社などの金融機関への調査(通帳の履歴の入手など)

●故人とその家族の所得税、贈与税の申告書の調査

●法人(多くは同族会社)の法人税の申告書の調査

ここでポイントとなるのは、亡くなった方だけではなく、家族の情報まで調査の対象になることです。税務署は金融機関に対して、故人とその家族の通帳などの取引履歴を最大で10年前まで遡って入手することができます。また、通帳開設時の印鑑や筆跡も確認することができるため、そのような情報を隠し通すことはできないと考えて良いでしょう。

②調査内容はとても細かい

税務署が税務調査に入った場合、10人中8人は追徴になるといいました。なぜそれほど高い追徴率になるのかは、隅々まで調査することで調査官が追徴の必要があると確信を持って行っているからです。

では調査当日、どのようなことが調べられるのでしょうか。調査内容は次の通りです。

●人についての情報:学歴、職歴、居住地、転居歴、親族、趣味、生活レベル、病歴、財産管理者など

●物についての情報:不動産の状況、通帳のメモの確認、自宅にある物の確認、県外口座の有無など

●金銭についての情報:銀行や証券会社との関係、多額の預金引き出し履歴、生前贈与の有無など

これらの点について、聞き取りも含めた調査が丸一日行われます。通常は1~2日、長くて3~4日かかることもあり、その間に財産の保管場所の確認や、金庫の調査、印影の取得、家族名義の通帳の確認などが行われます。

調査官はその道のプロです。些細な情報からでも不備がある点を次々と引き出していきます。

 

税務調査に入られないために

これまでお話ししてきた通り、税務調査の対象に選ばれると、時間も労力もかかり、とても大変です。また、追徴があった際には延滞税、悪質な場合には重加算税というペナルティを加えた金額を修正申告しなければなりません。そこで、皆さまには、「税務調査に入られない」相続税申告を目指していただきたいと思います。ポイントはこちらです。

①名義預金、名義保険に注意する

名義預金とは、子どもの名前で預金通帳を作ったが、実態は親の財産から預金しており、その通帳も親が管理している、というものです。税務署は、親の財産とみなし、相続税の課税対象となります。

名義保険とは、子どもの名義で保険の契約をしているが、保険料を支払っているのが親という場合です。これも子どもの保険ではなく、親の保険とみなされ、相続税の課税対象となります。

このケースでの追徴はとても多いです。皆さまが相続対策をする際には必ず確認しておきましょう。

②贈与をした場合、贈与があった

という証拠を残す

前回の記事でお伝えしていますが、贈与を証明するには証拠と根拠が重要です。きちんと贈与成立の要件を満たしているか、その証拠を残しているかを確認しましょう。

③相続トラブルにならない対策をする

相続トラブルが起きると、税務調査に入られる可能性が高くなる可能性があります。故人が持っていた財産の情報が不明確なまま申告をして、税務署がその財産を探し当てたという話もあります。また、税務調査に入られやすい事例として、相続人が相続税の申告を別々に行った場合があります。税務署もトラブルの裏には不明瞭な申告があるのではないかと疑うものです。

④信頼できる専門家に相談する

相続税の申告の際には、相続税のことだけではなく、相続全般に詳しい専門家の協力を仰ぎましょう。税務調査の可能性が格段に下がります。かつ相続税を抑えることができる特例を活用したり、財産の調査を行ったりしますので、結果として相続税の支払い額を抑えることができます。

ただし、相続全体に詳しい専門家はごく少数であるのが現実です。知識や経験、実績が十分であるか、そして何より皆さまに寄り添って歩んでいくことができる専門家であるかどうかがとても重要です。

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