お知らせ
NEWS
◎相談事例◎ 相続遺留分について
2022.03.10
全国相続サポートセンターで受け付けた相談事例をご紹介します。
【内容】
私への⺟からの合計1200 万の贈与(⺟と同居する為のマンションの⽀払として)と、⼜、それぞれ兄へ 150 万、姉へ 230 万の贈与があり、合計 1,580 万の⼦供達への贈与があります。(先程の問い合わせの姉の⼦供への⾞購⼊代 150 万は 15 年前で特別受益の対象となるか不明でしたので除きました)
遺留分の計算⽅法からすると、
1,580 万(これ以外に遺産はありません) )/ 2 (⼦供のみが相続⼈です )=790 万
そして
790 万 /3 (⼦供 3 ⼈ですので) 約 260 万。これが兄、姉の遺留分と思っております。
となると、兄には
260 万- 150 万- 110 万、姉には 260 万- 230 万- 30 万を私から⽀払うものと思っております。
この考え⽅で正しいものかどうか、どうぞご教授下さいます様お願い致します。
⼜、⺟と同居する為のマンションの⽀払いも⺟からの贈与と考えるのでしょうか。お教え下さい。
【回答】
遺留分の算定⽅法の⾒直しは、
2019 年 7 ⽉ 1 ⽇以後の相続等に適⽤されます。
したがって、本件相続は旧法の適⽤となり、持ち戻される特別受益は直近10 年に限定されません。
特別受益とは、相続⼈に対する贈与等をいいます。
⼦が存命の場合、孫は相続⼈ではありませんから、孫への贈与は原則として特別受益にはあたりません。
ただし、実質的には相続⼈への贈与であるのに名義のみを孫にしていた場合には、特別受益に該当すると考えられます。
本件の場合はその辺りの状況がよく分かりませんので、⼀旦原則通りと考えさせていただきます。
また、⺟と同居するためのマンション購⼊費の⼀部を⺟から贈与されていた場合、基本的にはそれも特別受益であると考えます。
費⽤を親⼦で拠出した場合、拠出割合に応じて親⼦共有名義とするのが基本です。
それを共有ではなく⼦単独名義にしたのであれば、やはり親から⼦への特別受益があったと判断するのが妥当だと考えるからです。
そう考えると、遺留分算定の基礎となる財産額は⾨司達也様のご指摘のとおり1,580 万円です。
兄・姉の遺留分額も、ご質問者様が計算されたとおりです。
(あくまでもメールいただいた内容だけからの判断であり、その他の事情があれば結論は異なります)
【内容】
遺留分減額請求には、時効がある事を伺っていたのですが、被相続⼈の死去を知ってから1年、被相続⼈の死去を知らなかった場合は、亡くなって10年過ぎると時効となるのかと思いますが、母が亡くなったのが 2019 年 6 ⽉ 3 ⽇で、既に 2020 年 6 ⽉ 3 ⽇で遺留分減額請求は時効となっているのかと思っております。
このような解釈でよろしいのでしょうか。ご教授頂ければ、⾮常に助かります。何卒、よろしくお願い申し上げます。
【回答】
遺留分請求の時効については、条⽂の⽂⾔に多少変更はあるものの内容については新法も旧法も変わりありません。
期間制限は以下の2 つです。
①遺留分権利者が相続開始及び減殺すべき贈与⼜は遺贈があったことを知った時から1年
②相続開始時から10年
②の起算点は相続開始時であり、⽇にちは 基本的に確定しているはずですから争いはありません。
しかし、①の起算点は相続開始時ではなく、相続開始及び減殺すべき贈与⼜は遺贈があったことを「知った時」です。
実務上、問題(争点)となってくるのは、「知った時」とはいったいいつなのか︖ ということです。
この点について、過去に最⾼裁判所が次のような判決を下しています。
(最判S57.11.12「相続の開始及び減殺すべき贈与⼜は遺贈があったことを知った時(起算点)とは、遺留分権利者が単に財産の贈与(遺贈)があったことを知った時ではなく、それが減殺できるものであることを知っていることが必要である」
更に、参考までに、その他の裁判所が触れた判例を2 つ挙げておきます。
(東京⾼判S52.4.28「減殺すべき贈与があったことを知った時とは、単に被相続⼈の財産の贈与があったことを知るだけでは⾜らず 、その贈与が減殺すべきものであることを知った時を指し、遺留分減殺請求権の消滅時効が進⾏するためには、遺留分権利者において、遺留分を侵害する贈与であるとの認識を有したことを必要とするが、被相続⼈の財産のうち、相続⼈のために残さなければならない何らかの財産(遺留分)があること、その贈与の効⼒がそのまま維持されると遺留分権利者の利益が何らかの範囲で損われるということについてのそれであることを要し、かつ、これをもって⾜ りるの であって、遺留分の精密な算定や遺留分侵害の正確な割合、減殺請求しうる
範囲などについて具体的な認識がなくても、消滅時効が開始することの妨げとならないものと解するのが相当である。」
(⼤阪⾼判H7.8.24「減殺すべき贈与を知った時とは、贈与の事実及びこれが減殺できるものであることを知った時をいうが、予備的にでも遺留分減殺請求権を⾏ 使する ことは通常は容易であること及び⺠法 1042 条にある短期消滅時効により、法律関係の早期安定を図る趣旨に照らし、的確に知ったことまで要求するものではなく、遺留分権利者が権利を⾏ 使する ことを期待することが無理でない程度の認識を持つことを意味するものと解すべきである。」
これらの判例を踏まえると、単に贈与や遺贈の事実を知ったからといって、その時から消滅時効が進⾏するとは限らないと考えます。
ただし、必ずしも侵害されている遺留分の内容(割合など)について、遺留分権利者が詳細に把握していることまでを要求しているけではないようです。
したがって、遺留分の消滅時効の起算点は、結局のところ双⽅の事情を踏まえた上でケース・バイ・ケースで判断することになります。この点についてご質問者様が争いたいということであれば、お近くの専⾨家に具体的にご相談されることをお勧めいたします。
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