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賢い生前贈与のススメ①

2022.01.15

生前贈与は効果的な相続対策のひとつです。今回は、生前贈与の基本から具体的な活用方法、その際の注意点などを細かく解説していきます。

 

なぜ贈与税があるのか?

皆さまは「生前贈与」されたことはありますか。贈与とは「自分の財産を相手に無償で渡すこと」を言います。言い換えると、財産をお持ちの方は、誰に、何を、いくらでも自由に渡していいことになっています。

日本では、鎌倉時代から室町時代の頃にはすでに贈与の慣習があったそうです。もともとは贈答儀礼だったようですが、現代では親から子、孫へと財産を引き継ぐためや、相続税の節税のための方法として一般的に知られています。

ただし、贈与はその金額に応じて「贈与税」という国税が課せられます。この贈与税は、最高税率が55%というとても高い税金です。

この話を、ある相続セミナーでお話しした時、「なぜ家族の中で財産を動かすのに税金がかかるのですか?」という質問をされたことがあります。その答えは、「相続税」があるからです。もしこの世に贈与税がなく相続税だけが存在していたとしたら、皆さまはどうされますか。私なら、相続発生前、つまり自分が亡くなる前にすべての財産を子どもに無税で渡してしまいます。そうならないように、贈与時には相続税よりも高い税率をかけているのです。

 
ポイント

贈与税は相続税を補完するために設けられている、ということになります。

 

贈与による相続対策

私見になりますが、贈与はとても良い相続対策であり、資産移転の方法だと思います。それはなぜかというと、「家族の喜びを実感できる対策」であるからです。

例えば、遺言は自分が亡くなった後にその効果が発揮されることになりますし、生命保険の死亡保険金も亡くなった後に支払われます。つまり、自分が亡くなった後に天国からでしかその効果を感じることができないわけです。

一方、生前に贈与を実行することで「お父さんお母さんありがとう」「おじいちゃんおばあちゃんありがとう」という声を聴くことができるのです。感謝の言葉は嬉しいですよね。しかも、贈与を受けるお子様やお孫様はこれから財産を築いていく方ですから、様々なタイミングでまとまったお金が必要になることが多いです。その時に、両親や祖父母から支援をしてもらえるのはやはりありがたいものでしょう。

この話をすると「うちの子はそんなことは言わない」や「孫は感謝などしないだろう」という声をよく聞くことがあります。しかし、贈与は複数年にわたり行うこともできるので、時間が経つにつれて、感謝の気持ちがにじみ出てくるものです。感謝されるために贈与を行うわけではないのですが、皆さまの財産はご先祖様から受け継いだ、あるいはご自身で築き上げた大切な資産だと思います。やはりその喜びはご家族全員で感じていただきたいと思っています。

 

贈与をする時に大切なことは?

皆さまが「特定の方に資産を移転したい」「相続税を下げたい」とお考えならば、贈与はとても手軽で効果的な対策になります。ただし、手軽にできる贈与であるからこその注意点があります。その注意点は大きくわけると2つあります。

 

  1. 正しい方法で贈与を行っているか
  2. 贈与税は無税もしくは相続税よりも低額か

 

では、それぞれの注意点について細かくみていきます。

 

正しい方法で贈与を行っているか

シンプルな表現ですが、「贈与=契約」になります。例えば、相続対策のひとつである「遺言」は、契約ではありません。遺言とは、財産をお持ちの方が「この人に財産を残したい!」という一方的な思いを書いた文書なので、受け手の承諾は不要です。財産を受け取る方の許可なく書くことができます。

一方、贈与は「契約」です。財産を渡す人が「あげますよ」、受け取る人が「もらいますよ」の意思表示が必要です。契約の中でも「諾成契約」といって、両者の思いが合うだけで成立します。極端に言うと、口約束だけで成立をするということです。実際はそれを書面に残したり実際に財産を受け取ったりして確定させますが、大切なのは両者の思いが合うことです。

贈与税は無税もしくは相続税よりも低額か

実際に起きたケースでご説明します。孫の令子ちゃんに現金を贈与したいと思った和広おじいちゃん。令子ちゃんのために自ら銀行に出向き、令子ちゃん名義で預金通帳を作り、そこに年間110万円の贈与を続けました。令子ちゃんはまだ幼いということもあり、令子ちゃんのお母さん(和広さんの長女)や令子ちゃん自身にはそのことを伝えず、令子ちゃんが成人してから渡そうと考えています。

このケースでは、何が問題になるでしょうか。一番の問題点は、贈与を受けている令子ちゃん(または令子ちゃんのお母さん)に「贈与を受けている認識がない」ということです。先ほども言いましたが、贈与は「契約」です。財産の受け手にその認識がなければ、贈与不成立ということになります。

では、この令子ちゃん名義の預金は誰のものでしょうか。残念ながら、この預金は和広おじいちゃんのものになります。つまり令子ちゃんの名前を借りただけで結局は自分の預金ということです。これを「名義預金」と言います。皆さまも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。実感として、個別相談にいらっしゃった方の約半数は、贈与をしたつもりが名義預金であった、というケースです。

この名義預金は、相続発生後に判明するケースがほとんどです。ここを注意しないと、贈与の効果が激減、あるいは贈与をしないほうが良かったということにもなりかねません。

 

ポイント

正しい方法で贈与を行っている方は実はとても少ないのです。

 

せっかくの贈与が無駄にならないように、正しく効果的な贈与について考えていきましょう!

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