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コラム「記録」

2021.03.01

ご相談者に「よくそんな細かいことまで覚えてらっしゃいますね!」とびっくりされることがよくあります。たしかに私の長所のひとつではありますが、「自分の身を守るため」に自然と身についた「仕事上の悲しいクセ」でもあるのです。

 

記録に残してトラブルを回避する

ご相談者に、以前お話しした内容を再度お伝えした際、「そんなことは聞いていません!」とお怒りの声をいただくことがあります。それが私の説明不足であれば、もちろん私の責任であり、心よりお詫びします。しかし、間違いなくきちんと説明したことなのに「聞いていない!」、「なんだ、それは!」と言われた時の、その悲しさといったらありません。

相続の実務をしていると、必ず直面するのが「老い」という問題です。私は、面談した時のご相談者のご様子やお話しの内容を、できる限り詳細に書きとめ、世間話なども含めて記録に残すことを心がけています。

「初めての時は、娘さんと一緒にいらっしゃいましたよね? 台風がそれたせいでとっても暑い日でした。入り口で、ピストルみたいな体温計をおでこにピッとされたのを覚えてらっしゃいますか? 2回目に来られた時には、○○堂のお菓子をいただきました。あの時、息子さんの昔話をしていただきましたよね? とてもお話ししづらいことだったと思いますが、それを話していただいたおかげで、私も遺言書をこのようにするべきでは、とご提案したのですよ」

「ああ、ああ。そうだった、そうだった」

相続について相談される方は、ご高齢の方がほとんどです。そして、対策をきちっとされた方は、身も心も軽くなり、がいして長生きされます。ご相談者も、その家族も、私自身も、対策を終えると、その記憶が少しずつ薄らいでいきますが、それは仕方のないことです。また、認知症などの病にかかることもあるでしょう。「忘れてしまうことが当たり前」と思うしかありません。

しかし、何度もお会いして、懇意にしていると思っていた方が、その時の経緯を忘れ、「なんだこれは!こんなこと聞いていない!」と牙をむいてくる、その恐怖は言葉にできません。とはいえ、相続コンサルのプロになる、そして長くお付き合いしていく、と宣言するからには、この恐怖に立ち向かう覚悟が必要です。

「あなたはその時、こうおっしゃいました。だからこれはあえてこのようにしたのです。そのお気持ちが、今は変わられたということですか? 変わられたのであれば、やりなおしましょう」

きちんと記録をしていれば、当時のご経緯をきちんとお答えすることができます。

 

コメント

「契約」と「納品」という言葉があります。多くの営業マンは、まずは「契約」を取ることを目的に動いていますが、私の業務で大事なのは「納品」だと考えています。「遺言執行を完了し、遺言者の希望通りに遺産を次世代に届けること」や、「生命保険の請求手続きをし、保険金を受取人に届けること」などが、相続対策における「納品」にあたります。

私の持論は、「納品する時に辞めていそうな営業マンと、契約を結んではいけない」です。私は、きたるべき「納品」の時に向かって、「契約」の責務を果たすべく、これからも皆様のお気持ちをお聞きし、受け止めていく所存です。

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