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不動産の活用~基本編~

2020.07.10

「不動産」の活用は、相続対策の王道です。しかし、ポイントを押さえておかないと本末転倒になる危険もあります。今回は不動産を活用した相続対策の基本的な考え方についてご紹介します。

 

相続財産の40%以上が不動産

マイホームや賃貸用のアパート・マンション、駐車場など、何らかの「不動産」をお持ちの方が多いと思います。不動産は現金同様、私たちの生活と関わりの深い財産の一つです。

不動産を使った相続対策には様々な効果が期待できます。賃貸住宅の建築や中古物件の売買がさかんに行われているのは、相続対策によるものが理由の1つです。また、節税対策では、現金や有価証券にはない独特の評価方法があり、効果的に相続税を減らすことができます。

図表①をご覧ください。

これは平成18年から10年間、相続税を納めた方が持っていた相続財産の種類と金額を割合で分けたものです。

相続税制の改正等があり納税者の現金・預貯金等の割合が増加する傾向にありますが、相続財産の40%以上が土地や建物といった不動産であることがわかります。相続対策で不動産のことを考えることは、相続全体を考えると言つてよいくらい重要なことなのです。しかし、不動産による相続対策を考える前に、皆さんに一つお伝えしたいことがあります。それは、相続トラブルの多くが不動産が原因となって起こっている、ということです。主に二つの原因を取り上げます。

分割時の共有

不動産は「分けにくい」財産の代表格です。現金は1円単位で分けることができます。また、有価証券も1株や1口単位で分けることができるため、争いになることは比較的少ないものです。一方、不動産は、場合によりますが土地を分けるぶんにはいいですが、賃貸マンションを半分に分けて相続するわけにはいきません。その際、共有による分割を行う方法があります。「相続人で仲良く有にする」というケースです。確かに共有で相続をすると、持ち分上は平等にできますし、不動産の売却時には、売れたお金を持ち分で分けることもできます。しかし、次のようなケースを考えてみてください。

相続人には長男、次男、長女の3人がおり、父は亡くなって、相続が発生。現金はほとんどなかったが、総戸数9戸の賃貸マンションを持っていました。3人で3分の1ずつ相続すれば、1人あたり3戸分の家賃を受け取れます。将来、それぞれ老後の費用も必要なため全員が合意をし、共有で相続しました。

その後数年が過ぎた頃、次男は老人ホームへ入所したいと考え、その費用を賄うために不動産を売りたいと長男と長女に相談しました。

長男:先祖代々守ってきた不動産を売るなんて、とんでもない!

長女:毎月家賃が入ってくるほうがいいから、売りたくない!

次男:売らないとホームの費用が払えない。いったいどうしたらいいんだ…。

このようなケースは、実に多く見受けられるトラブルです。不動産を共有すると、共有者1人の判断だけでは不動産を売ることも貸すことも、大規模な修繕を行うこともできなくなります。不動産を売るためには共有者全員が合意をする必要があります。相続する時点では問題がない場合でも、将来は各人の状況により不動産に対する考え方も大きく変わります。

さらにその先を見てみましょう。共有者である長男、次男、長女にそれぞれ配偶者と3人に子供がいたとします。その後、共有者3人が亡くなったとします。もし法定相続人がこの不動産を相続する場合、共有者は何人になっているでしょうか?

答えは「3組×相続人4人=12人」です。前述の通り共有状態の不動産を売りたい場合は、12人全員の合意が必要です。1人でも反対する人がいれば売ることはできません。実務上、12人全員の合意を取ることは至難の業です。

不動産を共有してしまうと相続人がどんどん増え、収拾がつかなくなる事態におちいります。解決には多くの費用と時間がかかることになるでしょう。不動産による相続対策を考える際には、「誰に」「どのように」相続していくかをしっかり考えていく必要があるのです。

不動産経営の失敗

平成27年に税制改正され、相続税が増税となり、不動産を利用した相続対策に注目が集まりました。低金利も追い風となり不動産の建築や売買が活発になりましたが、一方でトラブルも数多く報告されています。専門家の立場から言わせていただくと、その原因はただ一つ。

「相続対策のことしか考えずに不動産を建てたり、購入したりしたこと」です。不動産による相続対策は、建てて終わり、売り買いして終わりというものではありません。所有後も次の相続のことを考えながら継続して対策を行う必要があります。何より不動産を活かして利益を残すという大切な目的があります。不動産の所有者は立派な「経営者」であり、黒字経営を考えなければいけません。しかし、その意識を持たずに不動産による相続対策をする方が多いのです。

現在、不動産賃貸業を取り巻く環境は厳しい状況です。全国の賃貸物件の空室率は20%を超えており、少子高齢化が進んでいく中で、今後はさらに上がると予想されて

います。また建築会社によるサブリース問題などがメディアを賑わしているのも記憶に新しいところです。

だからこそ、不動産による相続対策を考える際には、長期的に不動産経営のパートナーとなってくれる建築会社や不動産会社を選ぶことが重要です。また、相談先が相続に関する知識の豊富さや経験があるかという点もポイントになります。相続の相談も、建物の集客や管理の相談もどちらも任せられる会社に依頼するのが望ましいでしょう。

不動産による相続対策を考えていく際には、これまで述べてきたような不動産の特性を踏まえたうえで対策を検討することが重要です。慎重に進めることで不動産によるトラブルなく、相続対策の大きな効果を得ることができます。

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