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新型コロナウイルスが相続に与える影響とは?

2020.06.20

志村けんさんが新型コロナウイルスにより亡くなられたことで、私たちは感染症の恐ろしさをまざまざと知ることになりました。以前よりも、死が身近に感ぜられるようになってしまった今、その備えについて考える方が増えています。

 

30代から相続を考える

 2020年5月15日現在、日本での新型コロナウイルス感染者数は1万6203人、死者数は713人で、感染者に占める死亡率の割合は、4・4%です。全世界では444万2163人が感染し、30万2418人が亡くなって、死亡率は6・8%となっています。

 死亡した人の年代の割合については、正式には公表されていませんが、世界保健機関(WHO)が4月3日に開いた記者会見によると、30代で亡くなられた人もいるそうです。

 30代といえば独身だったり、結婚したばかりだったり、結婚して子供が1人の世帯だったりすることが多いと思います。これまでは、ご自身の相続を考え始める年代は60代後半がほとんどでした。しかし、新型コロナの影響を受けて、今後は若年層であっても備えを考え始める人が増えてくるかもしれません。

 では、もし30代の方が亡くなり相続が発生した場合、どういった人が相続人になるでしょうか。

 例えば、独身の方に相続が発生すると、ご両親が相続人になります。

 また、子どものいない夫婦で夫が亡くなれば、妻および夫の両親が相続人になります。子ども1人の場合は、妻と子どもになります。このように、70代~80代の相続とは異なるケースになるのです。

 相続人が決まり、手続きを進める場合についても、一般的な相続とは異なる心情にならざるをえないでしょう。愛する子を先に亡くした両親や、若くして残された配偶者の悲しみは計り知れません。きっと簡単に手続きができないのではないでしょうか。

ポイント

一般のサラリーマン世帯であれば、現金等の金融資産の財産割合が多いと予想されるため、相続人が財産を受け取れば、揉めることなくすぐに進められるケースは多いと考えられます。

相続人が行う手続きは

 金融資産以外の財産として考えられるのは、分譲マンションや一戸建てなど自宅を購入しているケースでしょう。若い世代の人であれば、住宅ローンを組む際に、あわせて団体信用生命保険に入っている場合が多いと思います。加入していれば、相続が発生した際、住宅ローンの残金支払いを保険で免除されるため、借入れは無くなり返済義務も消滅し、残された借金を相続人が背負う必要はありません。

 このケースにおける法定相続分について考えてみましょう。

 夫が亡くなり、夫の両親と夫の妻が相続人となった場合、配偶者 、両親     が法定相続分になりま

す。しかし、遺産協議の際に、話し合いがうまくまとまらず、やむを得ず自宅を売却して換金し、分割することもあるかもしれません。自宅に住み続けられると考えていた場合、妻が思い描いていた生活とは異なる人生になってしまう可能性も考えておく必要があるでしょう。

 以前、相続人である母親の依頼で、がんでなくなったお子さま(30代・独身)の相続手続きをお母さまの代理で行ったことがあります。その際、私は、購入していた分譲マンションの団体信用生命保険の申請、携帯電話の解約、クレジットカードの解約、車両のナンバープレートの返納などの手続きを行いました。私が代理で電話している旨を伝えると、どの会社も母親に電話を替わるように言い、お子さまが申し込み時に設定した暗証番号やお子さまの生年月日を聞いてきます。子どもが亡くなったことは本当につらい出来事なのに、根掘り葉掘り質問され、その質問に答え続けているお母さまの姿はとても苦しそうに見えました。新型コロナの影響によって、このような悲しい手続きがこれからもっと増えるかもしれません。

 

人生を振り返るきっかけに

 新型コロナの感染拡大をきっかけに、これからは30代でも相続のことを考え、遺言書を作る必要がでてくるのかもしれません。そこで今のうちに、皆さまの身に万一のことがあった場合の財産の行き先を決めておきませんか。今こそ、そのタイミングだと思います。

 まずは公正証書遺言の作成をお勧めします。公証役場で作る遺言書は、信頼性と実現性が高い遺言書です。加えて、新型コロナの影響により、メール等でのやり取りが可能になりました。作成する際には、今までと異なり、向かい合わず、距離を開け、できるだけ風通しを良くする配慮がなされており、必要最小限の対面で作成することができます。

 それでも感染のリスクを避けるために、自宅にいたいと考える方もいらっしゃるでしょう。そういう方は、まずは家にあるノートや紙に自分の財産を思い浮かべ、渡したい相手を書いてみてください。その際、渡した相手に相続税がかかるかどうか、その方が相続税を支払えるかどうかも確認してください。もし自分で書くことが不安ならば、相続サポートセンターに相談してください。電話やメールでももちろん相談可能です。

 また相続税申告については、新型コロナの影響を受けて、申告納税の延長が認められています。相続人がコロナウイルスに感染してしまった方や体調不良で外出を控えている方、感染の拡大を防ぐために外出を控えている方も申告納税の延長が認められています。

 延長期限は、申告納税の延長理由が解決してから2カ月以内となっています。その申告方法については、通常の申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と書けばいいそうです。相続が発生し、相続税の納付期限が迫っている方もご安心ください。

 さて話は遺言書に戻りますが、遺言書を書く時に一番大切なことは、「付言事項」を残すことです。付言とは、遺言書の最後に書くことができる言葉です。好きな内容を文章で書くことができ、文字数の制限もありません。

 この付言に、自らの財産を渡す妻や子どもたちへの想いと、今まで自分を育ててくれた両親に対する想いも書いてもらえたらと思います。きっと、皆さまがご自分の人生をどう生きてきたのかを振り返る、いい機会になるでしょう。

 

 

ポイント

自分の生まれてからの人生について、奥さまやお子さまにゆっくりと伝える機会は、あまり多くはないと思います。ぜひその想いを、遺言という形で残すことができれば、それはその先の代まで続いていく自分史になるのではないでしょうか。

 

 私たちは今、新型コロナ問題という世界的危機に直面していますが、ご自身の人生の振り返りの機会にしてもらえるといいのではないかと思います。

 

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